この気持ちに名前をつけるなら
「その場合、喋ったこともない女と光太、一子が優先しなきゃいけないのはどっち?」
「……光太」
「なら、それは光太自身が選ぶべきだわ。一子が決めることじゃないでしょ?」
「……、」
コクン、と首を折って頷くと、しかめられたさおりの顔が漸く和らいだ。
「よろしい!」
そのまま、私は小さなさおりの身体に腕を回す。
「……さおり、」
「よしよし。部屋に帰ったら沢山甘えさせてあげようっ!」
私は、きっとショックだったんだ。
光太が好きだと、あんな真正面から気持ちを向けられたことが。
光太の選択を受け入れなくてはならない時期は、きっと遠くない未来。
感覚はリアルなのに、その正体がわからない不安定さに、私の心がざわめく。
私はさおりの背中に回した手にギュッと力を込めた。