この気持ちに名前をつけるなら
次の日の小樽観光で、光太の様子がおかしい気がした。
いつもより口数が少なくて、少しぼんやりしている。
私が心配してチラチラと見ていると、ふと目が合って、光太は何でもないように笑った。
気のせいかと思ったけど、お昼前、光太は体調が悪いからバスの中で待機すると担任に申し出ていた。
「光太、大丈夫?」
「平気。ちょっと寝不足だっただけ」
「私もバス行くよ」
「──、」
「一人の方がゆっくりできるだろ」
光太が何か言いた気に口を開けたのと同時に聞こえた声は、私の後ろ。
「坂下、」
振り返ると、坂下は座る光太を見下ろしていた。
光太も坂下を見上げると、息を吐き出してから私に苦笑を溢す。
「寝るから一人で大丈夫だよ」
そう言われると何も返せない。
私は仕方なく立ち上がった。
「お土産、買ってくるね」
光太は笑って見送ってくれた。
「昨日の夜、遅くまで喋ってただけだから大丈夫じゃない」
坂下がそう言うと、さおりはボソッと「坂下と光太が語り合うなんてなんかキモい」と呟いていた。