この気持ちに名前をつけるなら






次の日の小樽観光で、光太の様子がおかしい気がした。

いつもより口数が少なくて、少しぼんやりしている。

私が心配してチラチラと見ていると、ふと目が合って、光太は何でもないように笑った。

気のせいかと思ったけど、お昼前、光太は体調が悪いからバスの中で待機すると担任に申し出ていた。



「光太、大丈夫?」

「平気。ちょっと寝不足だっただけ」

「私もバス行くよ」

「──、」

「一人の方がゆっくりできるだろ」



光太が何か言いた気に口を開けたのと同時に聞こえた声は、私の後ろ。



「坂下、」



振り返ると、坂下は座る光太を見下ろしていた。

光太も坂下を見上げると、息を吐き出してから私に苦笑を溢す。



「寝るから一人で大丈夫だよ」



そう言われると何も返せない。

私は仕方なく立ち上がった。



「お土産、買ってくるね」



光太は笑って見送ってくれた。



「昨日の夜、遅くまで喋ってただけだから大丈夫じゃない」



坂下がそう言うと、さおりはボソッと「坂下と光太が語り合うなんてなんかキモい」と呟いていた。




< 75 / 104 >

この作品をシェア

pagetop