この気持ちに名前をつけるなら
いつまでも受け身でいるのは良くない。
臆病で、自分から距離を作って、伸ばせる手にも気付いてもらえないことを仕方ないと諦めている。
光太やさおり、周りの人達が私の作った距離に気付いてくれることに甘えているんだ、私は。
それは私の弱さだ。
「坂下!」
横切る人たちを隔てて、まだ見える背中に叫んだ。
天パの前髪に隠れているけど、驚いたような表情がはっきりとわかる。
私は地面を蹴って駆け出した。
この気持ちが、感覚が忘れてしまいそうで。
「ありがとうっ」
駆け寄った勢い余って腕を取った。
坂下の驚いた表情がダイレクトに視界に飛び込む。
「人力車!すごく楽しかったね!」
クエスチョンマークが見えて、私は言葉を続けた。
「ごめん、あ、ごめんじゃなくて、」
溢れる気持ちのせいで言葉にならない。
自分の気持ち。
もどかしい。
でも、私も自分の足で歩きたい。
「坂下はどうかわからないけど、私、修学旅行で坂下と沢山思い出作れて楽しかったよ」
何故か、私は必死で伝えた。
坂下が一線を解放してくれる日が来るかどうかはわからない。