この気持ちに名前をつけるなら
バスに戻ると、光太は一番後ろの席で既に戻っていた別の友達と楽しそう話をしていた。
良かった。
体調は良くなったらしい。
私はなんだかいい気分で奥に進んで行った。
「光太」
呼ぶと、クラスメイトも含めてこちらを見る。
「良く寝れた?」
「ああ。心配掛けてごめん」
「ううん。これ、光太にお土産」
言って小さな紙袋を差し出した。
「ありがとう」
光太はそう言うと、視線を落として紙袋を振ったり触ったりしていた。
「もうすぐ出発するぞー。班長、点呼とれ」
その時、担任の先生が告げる。
私は座席着く前に、もう一度光太を見ると、光太はまだお土産の紙袋を弄っていた。
あれ?
ふと、違和感を覚える。
なんだろう。
ザワリ、と不思議な感覚が過る。
あ、そうだ。
光太と目が合わなかったんだ。
それは特別なことなのかと言われれば、そんなこともないのだろうけど。
後ろの方で光太と坂下の楽しそうな声が聞こえてくる。
どうして目が合うことが当たり前だと思ってる自分がいるのか、私は首を傾けた。