血の記憶
そんなところにいたくなくて教室をでた。
久しぶりに来た俺に皆が同情の視線を向けていたのが分かったけど、全部無視した。
今は周りに構っている余裕なんかないんだ。
教室をでて真っ直ぐ図書室に向かった。
菜央との思い出を確かめるように―――。
ガラッとドアを開け中に入る。
その時ちょうど授業の始まるチャイムが鳴った。
それでも気にせず図書室を歩き回った。
最後に窓辺に近づく。
そこは春の日に照らされ暖かく、その優しい日差しが菜央の笑顔を思い出させる。
菜央、ごめん。
約束守れそうもない。
菜央の最後の頼みごとだったのにな……。
だって思い出すだけで、記憶を辿るだけで胸が張り裂けそうなんだ。
何を見ても菜央に繋がる。
こんな俺が菜央以上に好きな奴が現れる訳ない。