血の記憶






「それからは地獄みたいだったよ、みんな俺に気を使ってくるし」



話し終わった翔真の瞳は濡れてキラキラしていた。


私と翔真。


過去が似ている。


根本的に違ったのは翔真は愛されていたこと。


私は恨まれていたこと。



「これが俺の過去。引いた?」


「別に。驚いたけど……それで初め会ったとき桜が好きかって聞いてきたの?」



私の言葉に頷く翔真。



「びっくりした。答えが似ていたから」



私は写真の中の菜央さんに視線をおとす。

写真の彼女は笑っていた。


背後には桜の木。


きっと話に出てきた桜だろう。



「でも、今でも分からない答えがあるんだ。菜央が最後の瞬間何考えていたのかとか」



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