血の記憶
菜央さんと翔真が見ている世界
写真から翔真へと視線をうつす。
「そんなの決まってるじゃない。翔真の幸せを願ってた、じゃないと自分のこと好きじゃなくていいとか言えないわ」
「なんで?俺は菜央が好きなんだよ、幸せを願うならずっと菜央の想ってた方が俺にとっての幸せじゃないの?」
「違う。そんなの苦しいだけよ」
翔真の瞳がまた揺れた。
「だからあなたも私に話してくれたんでしょう?」
翔真の瞳から耐えきれなかった雫が落ちた。
「いいかな…、俺前に進んでも」
「当たり前、怖くても進んで。私ができることあったら何でもするから」
すると翔真がいきなり笑いだした。
じゃあ、そう言いながら立ち上がった翔真の瞳は濡れていなかった。
「今から行きたいところあるんだけど、ついてきてくれる?」
輝く笑顔と一緒に差し出された翔真の手。
私はそれを少し躊躇しながら触れる。
怖い―――。
違う、あいつじゃない。
大丈夫。