血の記憶
紙をそっと開いていくと文字が書いてある。
「…これって」
「それ俺のケータイの番号だから。なんかあったら電話して、なくてもしてきていいから」
「…どうも」
笑顔の翔真には悪いけどこの番号、使うときはこない。
クシャッと丸めてそっと制服のブレザーのポケットに忍ばせた。
「それと」
なによ、まだなにかあるの?
口を開いた翔真に顔を向けると真剣な表情。
「親父が今度奈央と会って話したいことがあるって」
長居さんが私に……?
なんだろう、やっぱりあのときのこととかかな?
少し不安になりポケットの中の紙をクシャリと手の中で握った。
このときから嫌な予感はしていたのかもしれない。
警察官の長居さんが私に話がある。
正直話は聞きたくなかった。それでも聞かないといけない気がした。
「分かった。お父さんに詳しい日時を聞いておいて、予定空けとくから」
頷いた翔真を確かめ私は逃げるように外へと目を向けた。
外は皮肉なほど晴れていた。