血の記憶





「大丈夫。奈央は一人じゃないんだから」



その言葉と翔真の心臓から一定のリズムで流れる鼓動に私の身体に入っていた力が抜けていく。


大丈夫。


その言葉は私にとって自分への戒めだった。


一人でも大丈夫って


なにかあったら自分に大丈夫だって言い聞かせて。


でも自分で大丈夫って言った時より人に大丈夫って言ってもらえると本当に大丈夫なような気がしてきて。


私は今まで気を張っていたのかもしれない。


もう私には家族がいなくて


頼れるのは自分だけって。


でもそんなことなくて


本当は香奈も祐樹も翔真だって私のことをずっと心配してくれてて。



「翔真、もういいよ」



そう言って軽く翔真の胸を押すと押さえつけられていた頭の圧迫感がなくなりあっさり翔真から離れれた。


そのとき少し寂しくなった気持ちの正体は分からないけど



「―――ありがとう」


「…ん」



そう言って優しく微笑んだ翔真を見て跳ねた心臓に嫌な感じはしなかった。



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