血の記憶





実際私はなにもおかしなことはしてないはず。



「だって奈央ちゃん俺たちに挨拶初めて返してくれたんだよ!?」



は?


興奮した様子で叫ぶ祐樹に拍子抜けする。


挨拶って………たったそれだけ?


それに初めてじゃないでしょ。


今までにだって一回ぐらいは



「えーっ、奈央が挨拶返したの!?なにそれ、初耳!」



………無かったみたいね。


香奈があまりに驚くので本当なのだろうと納得した。


なんか照れくさいな…。


嬉しそうに笑う祐樹と香奈からスッと視線をずらすとそこには優しい目つきでこっちに微笑む翔真。


その視線に耐えきれなくて思わずうつむいた。


俯いてても隣から感じる翔真のその視線。


あの優しい瞳で見られてると考えるだけでなぜかくすぐったいし居たたまれないしで



「は、早く教室行かないと遅刻するよ」



誤魔化すように駆け出した。


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