血の記憶





あんな優しい空気は久しぶりで


慣れてなさすぎてどうすればいいかなんて分からない。


でもあの優しい空気に胸が暖かくっなって


これが幸せなのかなって考えたらやっぱりまだ怖かった。



お母さんのあの言葉が今でも私を縛る



それでも翔真の言葉は私をあいつからは救ってくれた。


ただ暗闇であいつの影に震えていた私を


人と関わることに臆病になっていた私を。


今まで香奈達に挨拶を返してなかったのは無意識に自分でブレーキをかけてたんだ


この人達なら私を受け入れてくれるってどこかで感じ取っていたから。


前はそれが嫌だった


ううん、違う。嫌だって強がってたんだ。


今はこんな汚い私でも受け入れてくれることが嬉しくて


これからは少しずつ素直になれたらって思うよ。


だから―――――。



「…ありがとう」



走りながら誰にも聞こえないように小さく呟いた。


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