血の記憶
「ちょ、ちょっと近いわよ」
「だって先生にバレたら怒られるよ?」
小声で抵抗した私に返ってきたのは正論。
だからって近すぎる
これじゃあ私の心臓が保たないわ
今だって壊れてしまいそうなぐらい跳ねているんだもの。
「ねぇ俺は奈央を少しでも助けられた?」
不意に耳元で聞こえた声の方を向くと翔真の真剣な表情。
それに頷いて見せると翔真は嬉しそうに微笑んだ。
それからスッと私があんなに抵抗しても離さなかった手を緩めて何もなかったように先生の方へと体を向けた。
翔真の手はもう私の腕を掴んではいないのに
なぜか私の腕はいつまでも熱がこもったままだった。