血の記憶






「翔真今日なんでイライラしてんの?」


「……別にしてない」



のぞき込んでくる裕樹にぶっきらぼうに返しスッと顔をそらす。


途端に目に映り込むその机


それの持ち主はすでに教室からでてどこかへ向かっていった。


―――――どうせ今朝の手紙の相手だろ。


朝奈央にいつも通り挨拶をした俺。


でもいつもと違ってなぜかひどく驚いて


そして慌てて閉められたロッカー。


一瞬見えたそれは手紙だった。


今日の俺が周りから見て不機嫌に見えたのなら確実にそれが原因だ。


好きな女が他の奴に告られたらいい気なんかするわけない


ってか奈央は俺の告白覚えてんのか?


忘れられてたらすげぇショックだ。



「ハァ……帰るか」



大きく息を吐いて椅子のうるさい音をたてながら立ち上がった。



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