血の記憶
どうか相手に聞こえてないようにと一度離した携帯をもう一度当てた俺の耳に
《今のは…………お前、まさかっ》
《しょっ、翔真!たすけっ………》
その声を最後に通話が途切れた。
「おい、奈央、奈央っ………くそ!」
携帯に向かって怒鳴ってみても返ってくるのは無機質な通話が切れたことを告げる音。
とりあえず探そうと向きを変えた俺に制止をかけたのは裕樹。
「ちょ、翔真ストップ。奈央ちゃんがどうかしたの!?」
裕樹の隣では中崎が心配したような顔で俺を見ている。
簡潔に話して探しに行こうと駆けだした俺を背後から中崎が待ってっ、と叫ぶ。
「っなんだよ、急がないと奈央が!」
「闇雲に探したって時間のロスでしょ!?この学校倉庫だけでも三つもあるだからっ」