血の記憶







「翔真………?」



男の姿が消えた後も身じろぎ一つせず見ている翔真が不安になってそっと呼びかけた。



「………っだよ」


「え?」



途切れ途切れに聞こえた翔真の声に聞き返したときだ。


不意に翔真が振り返って私は思わず息をとめた。




「っどうするんだよ、もし俺たちが間に合わなかったら!」




拳が白くなるまで強く握って叫ぶ翔真はあまりにも弱く、脆く見えて私はただ戸惑うだけだった。


そんな中動いたのは裕樹。



「……おい」



そばへ行き裕樹がそう声をかけると翔真はハッと目を見開いた。


そして妙に血色の悪い顔で辺りを見渡して私を見るなりその顔を歪ませたかと思うと



「俺っ……頭冷やしてくるわ」



そう言って倉庫から出ていってしまった。



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