血の記憶
とにかくその場から逃れようとそそくさと立ち上がった私に「待って」と声がかかった。
「それ持って行くの一人じゃ大変だろ、俺も手伝うよ」
「いや、でも―――」
「いいから」
ニコッと優しい笑みを浮かべて私の手から半分以上のノートを取り上げた。
ここまで言われて断るのは変に思われる。
そう思って仕方なく教室からでた私はキョロキョロ辺りを見渡した。
大丈夫、亮くんの姿は廊下にない
ホッと一息ついてさっと教室からでると先に立って歩きだした。
もし並んで歩いてるところなんて見られたら……。
その思いが私の足を早歩きにさせた。
「ちょ、香坂歩くの早くない?」
「別に早くないよ」
ごめんなさい、手伝ってくれてるのにこんな態度ばかりとって。
どうか、亮くんに会いませんようにっ………。