血の記憶







落ち着きなく辺りに視線を配りながら辿り着いた職員室、そこまで距離はないはずなのに途方もなく感じられた。



「先生、ノート持ってきました」


「おー…ん?高橋も一緒に来たのか」


「手伝いですよ、大変そうだったんで」



高橋くんは優等生らしい笑顔を浮かべている。


二人が話しだした隙に帰ろうとソロッと足を踏みだした私に先生の目が向く。



「お前ら二人ありがとな、これやるよ」



そう言って差し出されたのはチョコレート。


いつもは冴えない中年の先生が今だけ輝いて見えた。


受け取ったチョコを握りしめて職員室をでた私と高橋くんは自然と目を合わせる。


慌てて目をそらそうとした私に高橋くんが笑いながら言った。



「良いことはするもんだね、お陰で……」



ヒラヒラと今貰ったチョコを掲げてみせた。


嬉しそうなその様子は久しぶりに話したけど、高橋くんそのままで私は抑える間もなく吹き出した。





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