血の記憶
私がだした答えに満足げにニッコリ笑って私の腕をゆっくり解放した。
その笑顔の裏に隠された狂気をみた気がした。
「ごめんね、奈央腕痛かったよね?」
無造作に伸びてきた手を避けようとするのを歯を食いしばり力ずくで耐えた。
私の腕をまるで壊れ物に触れるかのように優しく触ってくるおぞましい手に吐き気がする。
視界に入ったそれは紫に変色しつつある痣。
触らないで、気を抜くとそう叫んでしまいそうだ。
「大、丈夫だ…から」
私帰る、そう続けて玄関のドアに手をかけた。