血の記憶







「あら、おかえり。今日は遅かったのね?」


キッチンからお母さんが呼びかけるけどそれに応えるような余裕はもう私に残ってなかった。


二階にある自室に飛び込むようにして入る。


部屋の中は真っ暗で私の荒げた呼吸音が響いてた。


ドアに身体をもたれかけたままズルズルと床に座りこむ。


荒かった呼吸が落ち着いてきた頃になっても身体の震えは収まらない。


それどころか増すばかり。


悔しかった


あんな暴力の前に屈した私が。


震えて泣いて謝った自分自身が。



「………これから何事もなく終われますように」



ポツンと零れた願いは途方もないものに感じられた。





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