血の記憶







「別に特に意味はないよ」



カップをテーブルに置いて右手で前髪を整えるとちらっと顔を見られた。



「嘘つくときの癖、無駄に前髪触るの」


「…高橋くんって刑事みたい」


「そう?で、なんで?」



誤魔化されないとでも言いたげにさらに言い募る。


真っ直ぐこちらを見る視線に耐えきれず紅茶のカップを見つめた。



「誤魔化されててよ、言いたくないの分かってるんでしょ」


「分かってるから聞くんだよ、金曜の香坂は明らか様子がおかしかった」


「言ったところでなんにもならない」



後ろめたさからだんだんと萎んでいく声でそれでも高橋くんを突き放す。


高橋くんは友達だ。


休みの人にプリントをわざわざ届けるようないい人。


友達だから


絶対に巻きこまない。




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