血の記憶
と、不意に腕が掴まれた。
なにが起きたのか、頭が理解する前に家に引きずり込まれた。
「…え、なん、で」
背後で鍵が閉まる音がした
振り向けずに震えた声で尋ねた私の声、答える亮の声は対照的に明るく弾んでいた。
「なんでって奈央が逃げようとしてるから、ほら、いつもみたいに部屋に行こうよ」
「やだ!私別れるって…」
掴まれた腕をはねのけ振り返った時だった。
全身に衝撃が走る。
意識が閉ざされる直前、聞こえてきた声に私は絶望した。
「…逃がさないよ、奈央」