血の記憶
「奈央、目覚ましたんだ。無駄だよ、ここには鍵がかけれるようになってるんだ」
楽しそうな笑みを浮かべ彼が近づいてくる。
「や、やだ。来ないでっ」
軽いパニック状態、距離をあけた分だけ彼は距離を詰めてくる。
「そんなに嫌がらないでよ、酷いな。
あ、そうだ、これ何だと思う?」
おもむろに取り出したのはタバコとライター。
―――嫌な予感しかしない
どうするつもり、震えた声で尋ねた私に亮はやはり楽しそうな声で答える。
「んー、奈央が嫌がるようだったら、ね」
そこで言葉は区切られた。
かえって嫌な想像が頭を駆けめぐる。
亮は予想通りライターを構えた、百均のライターが安っぽい音を立て火をつける。