血の記憶
叫ぶ力もなくしたころ、ようやく機嫌がおさまったのか私の腕を持ち上げてタバコの痕を唇でたどる。
「もう照れて抵抗しないでね?」
彼の中では私は嫌がっているのではなく、照れて暴れていると解釈したようだ。
なんてご都合主義なのだろうか。
言われなくても抵抗しない、身体が震えて動けないから。
彼の手が侵入する。
服をまくり上げられ目を強くつぶった。
「横腹痣になっちゃったね、ごめんね、奈央を気絶させるためにスタンガン使っちゃったから」
いつもなら虫酸が走る亮の声も、耳に残らず右から左へと通り過ぎていった。
ただあの時痛かったのはスタンガンだったのか、なんてぼんやり考えていた。