血の記憶






今思えば、このとき私は少し壊れかけていたのかもしれない。


横腹を這っていた手が徐々に上にあがってくる。


胸に手をかけられた、それでも抵抗する気は起きなかった。





そんな彼の動きを止めさせたのは一つのチャイム。


亮が舌打ちを打ちベッドから降りる。


部屋を出る直前、振り返って言った言葉が私を正気に返らせた。






「逃げないでね、奈央の家はこの部屋なんだから」







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