サクラドロップス-1998-
「・・・・・・!」
他に誰もいなくなった砂浜で
キミの姿を見失い
急にひとりで取り残されたような気分になったボクは
声に出して、キミの名前を呼ぼうとした。
けれど
その、寸前で
「なによぉ」
・・・と。
燃える赤の中から、いとも簡単に抜け出したキミに
「ちゃんと着いてきて。アタシ、方向音痴なんだからネ」
なんて、拗ねられて
きゅっと、左手をあたたかい両手で握られたから・・・
キミの名前を呼ぶ代わりに
ボクの唇からは、微笑みが洩れた。