サクラドロップス-1998-
「ありがと。なんかベタベタする。潮臭いし!やめときゃ良かったかな」
大して身長の変わらないボクの肩に片方の手をかけて
キミはバランスを取りながら『少年のような美脚』なんて言いつつ
タオルでその『美脚』を拭いていく。
「ちょっとぉ・・・ツッコミ入れてくんなきゃハズカシイんだけど、アタシ」
水分と砂の落ちた足にミュールをつっかけながら、キミは少しだけ頬を赤らめる。
こんなずれた時期に海を見に来る人はまばらで
聴こえてくるのは
キミの照れ隠しの笑い声と
覚えていた以上に大きな、波の音。
「んん?だって、別につっこむべきトコロ、ないでしょ?美脚、美脚。弓道部なのが残念デス」
「顔の表情変えずに言うな!もう、絶対本心じゃないー!」
「なんでそんな風に思うかな。被害妄想。ボクは嘘はつかない主義。知ってるでしょ?」
------隠し事は、しても。
「んー・・・知ってるけどサ」
そう言ってキミは、ボクから視線をそらすと、少しだけ悲しそうな顔をした。