SMIWWER
暖かい日の光が教室に満ちる午後
退屈な化学の授業を聞き流し
瑞波は爽やかな空を見ていた
吸い込まれそうな青
身体の真ん中で渦巻く感情を洗い流すような青だった
ふと考えてみる
なんでプールを避けているんだろう
心に立つさざ波の理由も分からず
それをただ 押し殺している
どこか不快だから 関わらないように
でも
このまま避け続けるだけでは
なにも変わらない
校庭の桜の枝についた若葉が
風をうけて揺れている
今日は吹奏楽部はオフだし
久々に泳いでみようか
ポツリと生まれたその小さな思いは
身体の中でほわりと弾けてなぜか
瑞波の心を軽くした
「じゃあこの問3を…南!」
「えっ、あ…ハイ。えっと…」
急いで教科書を開く
何ページの問3だ?
「0.5molだよ!」
隣の席のまりが囁く
瑞波はありがとうと笑って
「0.5molです」
と答えた