SMIWWER


つまらない式が終わると
部活動紹介が始まった


「部活動強制ってなんかアレだね!」


隣に座っている佳奈が
またコソコソと話しかけてくる


なんかアレってなんだよ


瑞波はテキトーに笑って
視線を前に戻した


教室で配られた紙には
部活動の名前が書かれている


けっこうあるんだな…


「野球部です!
経験者、未経験者も大歓迎!
女子マネージャーも募集してます!
僕たちと楽しく汗を流しませんか!」


体育会系のノリで語りかける部長


ボールを使って
野球部をアピールする


野球部は人気がある部活のひとつだ


特に興味のない瑞波は
配られた紙に目を落とした


着々と部活動紹介は進み
次に吹奏楽部が出てくる


退屈に紙の文字を何往復も読んでいた
瑞波も吹奏楽部に目をやった


他の部活より
人がたくさんでてきている
7、8人だろうか


その手には楽器を持っていて
射し込む春の光を反射し輝いていた


「経験者、未経験者も大歓迎です!」


テンプレを話し終えると
演奏でのアピール


楽器をかまえる姿に体育館の空気は
すっと静かになってゆく


部員達がアイコンタクトをし
息を吸う音が揃う


次の瞬間 波のなくなった空気を
大きな音色が揺らした


その揺れは空気を伝わって
お腹まで響いてくる


体育館中に共鳴していく


音の空気に飲み込まれていく


「…すごい…」


瑞波を含め 新入生は
その音色に魅了される


音色でその雰囲気を変える空気の中
ただただ感動しながら吹奏楽部を
じっと見つめることしかできなかった


演奏が終わり
その余韻がすぅっと消えてゆく


と同時に大きな拍手がまきおこった


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