SMIWWER


穏やかな雨は少しずつ髪を濡らした


空は重く暗く広がり瑞波のことを見下ろしているようだった


瑞波の足取りは重かった


今帰ったらクラブに行かないといけない


…行きたくない


中学校から家までは
歩いて20分ほどの距離


どうしても時間通りに帰りたくない


父親に何か嘘をつこう


委員会で遅くなったことにしよう


いつの間にかそう決めてわざと遠回りをしたり同じ道を往復したりした


小さなしずくは前髪をつたって
ポタポタと地面に落ちる


落ちていくしずくをみていたら
どうしようもなく悲しくなった


私はなにしてるんだろう


勉強もダメ
水泳もダメ


今だってサボる理由作りのためにこんなことをしている


…クズだ


前髪から落ちる小さいしずくに混じって
瑞波の頬を大きなしずくが流れ
ポタポタと地面に落ちた


かじかんで赤くなった手で頬をぬぐいながら2時間かけて家へと帰った


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