君が嫌いで…好きでした
告白
雪の降る学校の帰り道
突然の告白だった
相手は…見たことがある
確か同じクラスの…
名前は覚えてないけど…
遠くで他の生徒の楽しそうな話し声が聞こえる
だけど私達の空間は静かだった
じっと私を見て目を反らそうとはしなかった
千菜「……なんで私…?」
「千菜が好きだから」
迷いもなく真っ直ぐ私の目を見て言った君はきっと本当の事を言った
だからこそ近づいちゃいけないって…
私に…関わってはいけない
千菜「私は嫌い」
私はまるで雪のように冷たく言い放ち向きを変えまた帰り道を歩き出した
――学校から歩いて10分くらい
鞄から鍵を出して重いドアを開けた
音もしない静かな家
ただいまは言わない
言ったところでおかえりなんて言う人は居ないのだから
あ、違う
私が唯一ただいまを言う相手が居た
千菜「ただいま…チョコ」
薄茶色のハムスター
名前はチョコ
人差し指でそっと頭を撫でる
そして大好物のエサをあげる
エサを嬉しそうに頬張るチョコを見ていると冷たくなった自分の心が少しだけ癒されるような気がした
私もそろそろご飯にしよう…
帰りに寄ったコンビニの袋から買ったばかりの野菜ジュースを取り出して静かに飲んだ
ご飯はほとんど野菜ジュース
基本、作るのは面倒くさい
でもたまに料理は作る
たまにだけど…
別に野菜ジュースで充分だから
千菜「ご馳走さまでした…」
ご飯を食べたらお風呂に入る
シャワーを浴びてゆっくりお風呂につかる
半身浴が好きだから1時間くらいは入ってる
そしてお風呂から上がると私の大好きな時間
机の上に沢山のキャンドルを並べ火を灯した
そして引き出しから小さなオルゴールを取り出して机に置いた
準備ができ、いつものように電気を消すと
淡いキャンドルの火がユラユラと揺れて暗い部屋に明かりを灯した
そしてオルゴールのネジを回すと綺麗な音がゆっくりなり始めた
オルゴールから綺麗な音が流れ始める
それは私の大好きで…とても大切な曲
暗い部屋の中に灯るキャンドルの小さな沢山の火
そしてオルゴールの優しい音色
外では静かに白い雪が降り続いていた
この時間が一番好き…
大好きな曲を聴きながらただ火を見つめる
なんだか…眠たくなってきた……
私はそのまま深い眠りについた
千菜「……ん………」
明るい日差しで目が覚める
私…またこのまま寝ちゃったんだ…
いつの間にかキャンドルの火も消えていた
ふと目元に手を当ててみる
涙……?私は…また泣いたんだ…
夢を見た気がする
誰かがずっと千菜…千菜って私の名前を呼んでいた気がする…
………泣いたところで何も変わらない
何も…戻ってこない
私は涙の跡を拭い立ち上がってベランダの戸をあけた
冷たい風が私を通り過ぎる
外は雪がやんでいて空が晴れていた
窓の外は眩しいくらいの真っ白な雪景色
息が白く空に消えていく
「俺と付き合って」
「千菜が好きだから」
ふと頭に響いた
そういえば昨日そんな事言ってた人が居た
学校の人なら私の噂を知らないはずない
あぁ…面白半分だったのかな
まぁ、私には関係ない
千菜「……………寒い…」