君が嫌いで…好きでした


――…奏叶「そう弱火でゆっくりかき混ぜて…」


スプーンを握る手に力が入る
焦げないように焦げないようにと慎重にやっていくけど…


ジュー……


千菜「また焦げちゃった…」


湊「またかよ。もう材料ねぇぞ」


奏叶「ちょっと焦げただけだから多分大丈夫だよ」


焦げてしまったカラメルの入った鍋を持って私は気落ちした
今は学校での調理実習の真っ最中
メニューはカスタードプリン

噂の消えない私に近づく人は未だに居なくて自然と奏叶と湊と一緒の班になった

それは別に良かったんだけど…プリン作りを始めて数分…失敗続き


奏叶「でも千菜が失敗するなんて意外だね」


湊「料理は人並みに出来るわりに、菓子作りは苦手なんだな」


千菜「…料理はしたことあるけどお菓子作りなんて始めてだもん…」


自分でも信じられないけど…私お菓子作りは苦手かも…


千菜「私…洗い物頑張る」


奏叶「誰だって苦手な事くらいあるからね。プリンは俺達に任せてよ」


はぁ…カッコ悪い所見られちゃった…
そんな事を考えながら洗い物をしていると大きな音とともに他のグループの女の子が声を挙げた


先生「どうしたの!?」


「ちなちゃんが鍋にぶつかって火傷した!」


先生「すぐ冷やして!あなたは冷凍庫の中から保冷剤持ってきて!すぐ保健室行くわよ!」


火傷した女の子は友達に付き添われてすぐに保健室に行った


奏叶「…火傷の痕残らないといいね」


湊「千菜も気を付けろよ。意外とドジな所あるんだからな」


千菜「…うん」


奏叶と湊の会話はあまり入ってこなかった
何よりもまたクラスメイトが怪我をしたから…最近私のクラスで小さな怪我がいくつも発生している

どうしてなのか分からない
だけど不安が不安を呼ぶ
そしてどこかで私のせいなんじゃないかって怖くなっていた



奏叶「千菜プリン出来たみたいだよ。食べよ」



お皿の上に乗った少しいびつなプリンに黒すぎるカラメル


湊「意外とうまそうじゃん」


やっぱり湊と奏叶は作るの上手だな…


だけど食べてみるとやっぱり私が焦がしてしまったカラメルが苦かった


湊「う、やっぱり苦かったな」


奏叶「んーでもプリンが甘いしこれはこれでちょうどいいんじゃない?」


千菜「無理しなくていいよ…」



そして午後は体育の授業
内容はバスケだった


コートの中を力一杯走ってボールを追いかける男子達。それを外野で見ながら声援を送る女子達

そんな女子達から離れて私は1人で壁におっかかりながらバスケの様子を見ていた


そして女子達が声援を送る先にはコートの中を駆け回り協力プレイで華麗にゴールを決めていく奏叶と湊の姿があった


私と一緒に居るようになっても2人の人気は相変わらずみたいで…たまに告白されたりって事もあるみたい


よく考えるとそんなモテる人達が私と一緒にいることが不思議


でも…他の女の子が騒ぐのもなんとなく分かる。こうして見てると他の男子より運動神経がよく見える
しかもその運動神経がいい2人が手を組んで居るから尚更

今まで2人が運動してる所なんてまともに見たこと無かったけど…湊はバスケ教えてくれただけあるし華麗にゴールを決めちゃうし、奏叶もドリブルが凄く上手でカッコいい…

今日は保健室行かなくて良かったかもしれない。だってまた新しい1面を見られたから…


だけど奏叶達を見ているのに夢中で私は気付かなかった
私の真上に掲げてあるスローガンの看板がヒモが切れて落ちてきたのを


ブチッ…ガタッ…


奏叶「…千菜危ない!」



――――…ガッターン…
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