君が嫌いで…好きでした
………後悔しても遅い
奏叶の前で泣いてはいけないと後悔してから気づいた
でも奏叶の顔を見たら自分でも分からない
涙が自然とこぼれたの
悲しかった?辛かった?それとも…嬉しい…?
自分で自分の事が分からない
奏叶の腕の中…別れる?と聞いてきた奏叶
抱き締められてるから奏叶の顔が見えない
どうしてそんなこと言ったの?
どうしてそんな寂しそうに言うの?
今、奏叶は何を考えてるの?
でもそうさせてるのは間違いなく私
確かに別れてしまった方が奏叶の為かもしれない
そうすれば奏叶が死ぬことはないかもしれない。それが今の私が奏叶にしてあげられる事かもしれない
……1人に戻れば不安に襲われる事もない
でも奏叶と関わった事実は消えない
別れたところで全部無駄かもしれない
それに奏叶との事を思い出にしてしまうの…?
未来の事は誰にも分からない
何が正しい答えなのか私には分からない
千菜「…馬鹿じゃないの…私は奏叶が居てくれれば幸せなの」
ごめんね奏叶
弱虫でごめんね
奏叶に…そんな思いをさせてごめんね
でも奏叶が居れば今まで見えなかった未来を描くことが出来るの
貴方の側に居たいの
だって…奏叶が好きだから
奏叶「……ははっ。千菜って変」
何故かそんな風に言われた
千菜「奏叶に言われたくない…それより離して…涙も止まったから…」
奏叶「なんで?」
千菜「…恥ずかしい」
分かってるくせに聞かないで
たまに奏叶は意地悪だ
でもそんな奏叶が好きな私はおかしいんだろうな
奏叶「…さっきは泣いてたのに今度はなんで笑ってるの?」
千菜「分かんない…でもなんか嬉しいの」
奏叶「変な千菜。そろそろ帰ろうか」
時計を見ればとっくに授業が終わって放課後になっていた
授業終わりのチャイムにも気付かないなんてあるだろうか
教室に戻ると湊は居なかった
もう凜ちゃんの所に行ったんだ
夢中になれるものがあるって凄いな…
帰り道、ずっと繋いだ手
今日あんな事があったのに何故か胸につかえていた不安が嘘のようになかった
あんなに不安だったのにどうしたんだろう…
アパートに着くといつものように奏叶が見えなくなるまで見送った
夢も最近見なくなってたし、何故かいつもあった不安もこの日は消えていたから安心していた
同じ明日が来るのだと、また湊と奏叶がいる賑やかな1日が始まるのだと別れを惜しみながらも明日が来るのを楽しみにしていた
でも奏叶に私の声はどうやら届かなかったらしい
ずっと良い天気が続いていたのに、その日の夜は久しぶりに雨が降りだした
悪い知らせを届けるかのように…