君が嫌いで…好きでした

次の日、答えが出せなかった私は伊藤先生に相談してみる事にした


ガラ


伊藤「うおっ…びっくりした…
なんだ東か。脅かすなよ」


保健室のドアを開けると先生はパンを食べていた


伊藤「あ、これか?
今日ちょっと寝坊して食べてる時間なかったんだよ。他の先生にはナイショだぞ?」


笑うと少し幼く見える伊藤先生
こうしていると病気なのが嘘みたいに思えるけど…


伊藤「それで?またこんな朝早くに来てどうした?」



千菜「先生に…少し相談したい事があって…」



伊藤「そうかそうか
嬉しいな~東が俺を頼ってくれて
けどこれ食べ終わるまでちょっと待ってな」



私はコクンと頷いた


パンを食べ終わると先生は何か薬を出して飲み始めた
それを見て心臓が高鳴った


千菜「先生…今の薬って…
もしかして病気が悪化したんじゃ…」


私が先生と関わったりしたから…!


伊藤「…ぷ…はははっ
そんなに不安そうな顔で心配しなくても大丈夫。ただの頭痛薬さ」



千菜「頭痛薬…なんだ…良かった……」



伊藤「そう心配するなよ東
最近は本当に調子がいいんだ。きっとこれのおかげだな」


先生は私の作ったお守りを見せた


先生の笑顔を見て私もどこか安心した


伊藤「さて…ご飯も食べたし、相談があるって言ってたな。よし話してみな?」



千菜「…昨日七瀬奏叶に付き合ってって言われた…」



伊藤「あぁ…あいつか。で、返事したのか?」



私は首を横に振って答えた



千菜「…先生…私どうしたらいいか分からない」


伊藤「…東はあいつの事どう思ってる?
あいつが好きか?」



私は…七瀬奏叶の事…



私はただ頷いた


気づいてしまった
自分が七瀬奏叶を想っている事に…


千菜「だけど…また繰り返してしまうんじゃないかって
七瀬奏叶まで居なくなっちゃうんじゃないかって…

先生…私怖いの
どうしていいか分からない
七瀬奏叶まで居なくなってほしくない…」



失いたくないから今まで避け続けて来たのに…



千菜「やっぱり私は1人の方が…」



伊藤「東、それは違うな」



千菜「先生…?」



伊藤「東…お前は俺の大事な生徒の1人だ
だから教師としてお前にアドバイスしてやる

東、今のお前は怖くてただ逃げてるだけだ
自分がもうあんな想いをしたくないとあいつの気持ちから逃げてるだけだ

お前が1人で居ようとするのは誰かを守るためだろ?
でも本当は1人で居たくないはずだ」



千菜「違う…私は1人でも…」



伊藤「ならなんで俺の所に来た?
言葉ではなんとでも言える
だけど自分の心は誤魔化せない

お前は本当は誰かと一緒に居たいと強く想ってる
だから今も悩んでいるんだろ

東…もういいんだ我慢しなくても
過去を振り返る必要はない

…過去を消せとは言わない
確かにお前の家族が亡くなってしまった事実は消えない
だからといってお前は過去に捕らわれすぎだ

もう自分を責める必要はないんだ
あいつならきっと東の過去を受け止めてくれる
そして一緒に進もうとするだろう
あいつとならきっと新しい未来に行けるはずだよ」



千菜「…過去そして…未来……」



伊藤「もう自分の中で答えも出てきているはずだ。いい加減自分の幸せを考えたらどうだ?」



千菜「でも……」



伊藤「…まぁすぐに答えを出すのは難しいもんだ。俺からしたら東はまだ子どもだもんな
いっぱい悩んでゆっくり自分の後悔しない答えを出せばいいさ」



私が望む未来…
私の本当の想いを……


[いいか千菜。何もしなきゃ何も始まらないんだ。怖くても立ち向かう勇気がなきゃな]



お兄ちゃん……



伊藤「行ってこい。そろそろ授業が始まるぞ」



千菜「ありがとう…先生」



私は保健室を後にした


いつもと変わらない景色
窓の外は少し暖かそうな空が見える
もうすぐ春が来る
そう思いながら少しずつ溶けていく雪景色を見ていた


見慣れた廊下をただ歩く
今日も学校には色んな声が聞こえて賑やか



そんな中私は教室に向かって歩いた


伊藤先生の言葉…
なぜか心に突き刺さった

教室に入ると皆が一瞬私を見てそして何事もなかったかのようにまた友達と喋り始めた


いつもと同じ



奏叶「千菜!おはよ♪」



七瀬奏叶が私に話しかけてくるのもいつもと同じ


ただ……いつもと違うのは私の心境



千菜「…………ぉ…はょ…」



聞こえるか聞こえないか位の小さな声
初めて…挨拶を返す



私は…七瀬奏叶を信じてみようと思った
正直まだ怖くて怖くて戸惑ってる


だけど…変わらなきゃって
もう逃げちゃいけないって思ったの…

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