君が嫌いで…好きでした


千菜「…ぉ…はょ…」


誰かに挨拶をするのはいつ振りなのかな
なんだか…ただの挨拶なのに不思議な感じ…

だけど周りはシンとして冷たい空気が流れた

やっぱりこうなるよね…
今更こんなの気にしてないけど七瀬奏叶も変に思ったかな…

どこを見ていいか分からなくて私はただうつ向いていた


どうしよう…すごく怖い…



奏叶「…千菜…今…俺に初めて挨拶返してくれた…?」


千菜「…勘違いしないで…ただの気まぐれだから…」



なんだか恥ずかしく思えた

ゆっくり奏叶を見ると今まで見たことのないくらい笑顔だった


奏叶「超嬉しい…千菜が初めて挨拶してくれた。ありがとう千菜」


七瀬奏叶はなんて素直で真っ直ぐなんだろう

ただ挨拶を返したくらいでこんなに嬉しそう…

馬鹿じゃないの…


だけど私はそんな七瀬奏叶を見てなんだか胸が締め付けられた
目の奥が熱くなる…

こんな…気持ちはいつ以来だろう…


そして今日も長い1日が終わった


先生「今日はここまで。皆気を付けて帰るように」


なんだかあっという間だった気がする


皆嬉しそうに鞄を持って帰っていく
私も帰ろう…と思った時だった



奏叶「せーな♪一緒に帰ろ♪」



七瀬奏叶が笑顔で声をかけてきた



朝、挨拶を返してから七瀬奏叶はずっとご機嫌な様子


今までなら断った
だけど今はやっぱり…



千菜「うん…」


挨拶を返しただけで喜んでる七瀬奏叶を見たらもう…断れないよ…

そして思ったんだ
もっと君に近づきたいって…


いつも一人で歩いてた学校の廊下
今は隣に七瀬奏叶が一緒に歩いてる

不思議で…ずっと胸がドキドキしてる
誰かと一緒に歩くなんて何年振り?


こんなことになるなんて思わなかった

噂を怖がって誰も私に近づこうとはしなかったのにその噂をもろともせずに告白してきて何度突き放してもぶつかってくる
こんな人は初めてだった


先生「おい七瀬!」


奏叶「先生?」


先生「やっと見つけたぞ。お前なんだこの点数!」


国語の長澤先生
先生が持ってるのってこの間の小テスト…


七瀬奏叶……32点



奏叶「ちょっ…先生!赤点じゃないからいいでしょ!?」



先生「良いわけあるか!
課題を渡すからちょっと職員室に来い」



奏叶「ええーっあ、千菜…!ちょっと待っててくれる!?すぐ戻ってくるから!」


私はただ頷いた

生徒玄関の前で七瀬奏叶を待ってた

私の横を賑やかに帰っていく人達
私を見ては避けていく人達


色んな人がいるけど気にしない
大切な人を失う事ほど辛くて悲しい事はないのだから


まだ冷たい冬の匂いがする


七瀬奏叶……
課題を貰うだけだからすぐ来ると思うけど


32点って初めて見た
私に話しかけてきた時から思ってたけど…やっぱり馬鹿?

あんな点数初めて見た


…雪が残ってる
きっとまだ来ないよね
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