君が嫌いで…好きでした
シャクシャク…
千菜「…出来た」
雪うさぎ…
奏叶「千菜、何作ってんの?」
ビクッ…
振り返ると後ろに七瀬奏叶が居た
奏叶「ごめん脅かしちゃった?
あ、もしかして雪うさぎ?」
…雪遊びなんて子どもぽかったかな
奏叶「千菜って雪うさぎ上手だよね
ね、俺にも教えて」
千菜「え…?」
奏叶「俺も作ってみたいし
それに独りぼっちじゃこいつ可哀想じゃん
俺がこいつに友達作るの♪」
友達…
この時の七瀬奏叶の言葉はまるで全部私に向けられてるみたいだった
奏叶「出来た!中々上手でしょ俺!」
私の作った雪うさぎの隣に少し形のいびつな雪うさぎが並んだ
いつも雪うさぎを作るときは一匹だけだった
だけど今の雪うさぎは二匹揃ってなんだか嬉しそうに見える
でも…
奏叶「千菜?どうしたの?」
千菜「溶けたらまた離れるのかな…」
ふと思ったことが口に出てしまった
でもこの雪うさぎ達を見てたら悲しくなった
きっと私は無意識にこの雪うさぎと自分を重ね合わせていた
奏叶「…そんな事ない。この二匹はずっと一緒だよ」
真っ直ぐ雪うさぎを見て迷うことなく言った
どうして…どうして七瀬奏叶は…
千菜「どうしてそう言い切れるの…?」
ずっと一緒に居るなんてただの夢物語
死んでしまったら全て終わってしまうのに…
奏叶「ん?なんとなく」
にっと笑った七瀬奏叶
なんて適当な答え…
なんの根拠もないのに大丈夫って言い切るの?
馬鹿じゃないの…
でも…なんでかな
根拠もないのになぜかそうだと思わせられる…
もしかしたら…あの雪うさぎは本当に…
奏叶「…そろそろ帰ろっか」
帰り道を七瀬奏叶と並んで歩く
七瀬奏叶との距離は前よりも少し近く感じた
未だに肌寒い…
冷たい冬の匂いの中に七瀬奏叶の香水の匂いが混じってる
本当に不思議な感覚…
七瀬奏叶は次の角を右に曲がろうとした
だけど…私は足を止めた
それに気付いた七瀬奏叶は振り返って私に声をかけてきた
奏叶「千菜?どうしたの?」
足が動かない…
これ以上先には行きたくない
だって覚えているから…