君が嫌いで…好きでした
奏叶「千菜?どうしたの?」
千菜「……こっちには行きたくない」
奏叶「行きたくないって…いつもどこから帰ってるの?」
私はただ真っ直ぐ歩いていく道を指差した
奏叶「こっち?前も思ったけどなんでわざわざ遠回りしてるの?」
そうだよ…
わざわざ遠回りするくらいこの道は通りたくないの
だってこの道の先で真琴は…
思い出したくないから
この道を通ると思い出してしまうから…
奏叶「……分かったなんか理由があるんだよね?
千菜が嫌ならこっちから帰ろう
それにこっちの方が千菜と長い時間一緒に居れるしね♪」
七瀬奏叶はただ笑ってた
何も聞かずにまるで察してくれたみたいに…
そして家までの道のりをほとんど喋らないで歩いた
時々七瀬奏叶を見ていた
女の子みたいに可愛い顔つきなのに私よりも身長が高くて…
そういえば…たまに見せる真剣な顔は少しカッコよくて男の子らしい…
だから余計にドキドキしてしまうのかな…
いつからなんだろう…
いつから七瀬奏叶は私の中でこんなに大きな存在になっていたのかな…
千菜「ここまででいい…」
ゆっくり歩いていたはずなのに気づけばもう家の前に着いていた
奏叶「じゃあね千菜!また明日」
帰って行く七瀬奏叶の後ろ姿を私は見えなくなるまでただ眺めていた…
だけどこの後に起こってしまった事を…私は明日になって初めて知ることになり、大きな後悔をすることになる…
お風呂上がり
いつものようにキャンドルに淡い火を灯してオルゴールをかけた
オルゴールから流れる大好きな音色がとても心地いい
なんだか…まだドキドキしてる気がする
家に帰ってきてからはずっと七瀬奏叶の事を思い出していた
朝から帰りまでずっとその光景を頭の中で繰り返す
朝、誰かに挨拶をしたり帰りに誰かと一緒に帰ったりするのはいつぶりなんだろう…
こんな風に感じるのはおかしいかな…
久しぶりにワクワクする
そんな感覚…
きっと…きっと大丈夫だよね…
もう…あんな思いはしないよね…?
私は少しの期待と大きな不安を胸にゆっくりと眠りについた