君が嫌いで…好きでした
白い雪の上を歩いて学校に向かう
学校では賑やかな声があちこちで聞こえてくる
教室のドアを開けると皆が私を見る
そして離れて行きこそこそと何かを話し出す
いつもの光景
私には関係ない
自分の席に着いていつものように読書を始めた
全部いつもと変わらない
教室は賑やか
だけど空を眺めるとどこか寂しく感じる
1ページずつ静かに読み進める
ふと近くで声が聞こえた
「おはよ。あれ?今日は眼鏡なんだ」
ふと声の主を探して見上げると私の前には昨日告白をしてきた男が笑顔を見せて立っていた
私は視線を本に戻してまた読み始める
無視してればきっとその内どこか行くだろう
「いつもコンタクトだったよね?
でも眼鏡も似合ってるよ
ね、それいつも読んでるけど何の本?」
居なくなるどころかしつこい程話しかけてくる
周りからはまたこそこそと話す声が聞こえてる
「ぇ……××…なにしてんの…?本気…?」
「嘘でしょ…?噂知らないの……?」
「近づいたら………って…」
話し声が聞こえてどうしようもない気持ちが溢れた
「聞いてる?」
相手はしゃがんで私の目を見て話しかけてきた
………ガタッ
私は何も言わず立ち上がり教室から出ていった
ガラッ…
千菜「伊藤先生、少し休ませてください」
教室を出て向かったのは保健室
伊藤「お、東(あずま)か。何かあったのか?」
千菜「別に…少しイライラしただけ…」
伊藤「東、俺には全部話すって約束だろ?」
千菜「…私は約束した覚えないけど…先生が一方的にしたんじゃないですか?」
伊藤「ははっ、そういえばそうか」
千菜「……先生もこれ以上私に関わらない方がいいですよ」
伊藤先生はこの学校で唯一私の事を気にかけてくれる人
私が保健室に来るといつも話し相手になったりしてくれる
だけど……
伊藤「まだ噂の事を気にしてるのか?
そんなこと気にする必要ないぞ
それに俺は関わりたい奴と関わるよ
俺は大丈夫だよ東」
千菜「でも…先生までそうなったら…」
だから私は極力関わらないようにしていた
守りたかったから
もう誰も……失いたくなかったから…
そのせいで今では私に関わろうとする人は居なくなった
そして私も怖かった……
伊藤「……東は優しいな」
千菜「…え…?」
伊藤「いや、こっちの話し
そうだな…東には話しておくよ」
伊藤先生は陽気でいつも笑ってて笑顔が似合う人だった
だけどその時の先生はどこか悲しそうに見えた
伊藤「俺さ生まれつき病気なんだよ」
え……先生が病気…?
伊藤「…そんな風に見えないだろ?
ずっと手術や治療を繰り返して来たけど
本当はいつ死ぬか分からない」
いつ死ぬか……先生が……?
伊藤「生まれつきなんだ
だからもしそうなったとしても
俺はそういう運命だったって事さ
だから東のせいじゃない
そうなったとしても絶対自分を責めないって約束できる?」
先生は本当の事を言ってる
今まで話さなかったのは私の為…?
そして話したのも私の為…?
先生に心配かけてる
そんなの駄目
千菜「…分かった、約束する…」
先生は良かったと笑顔で返してくれた
先生は笑顔に戻り鼻歌を歌いながら仕事を始めた
私はベットの方に行き靴を脱いでベットに上がった
………ごめんね先生、私…嘘ついた
伊藤「あ、そういえばちゃんとご飯食ってるか?また野菜ジュースだけとか言わないよな?」
千菜「…野菜ジュースだけです」
伊藤「はぁ…お前また少し痩せたぞ?
料理出きるんだからしっかり食べろ?」
千菜「…めんどくさい…
たまに作って食べてるから大丈夫」
伊藤「東のたまには月に2、3回だからな…
また倒れるぞ」
千菜「…今日はお弁当持ってきた……」
伊藤「お、えらいえらい。しっかり食べろよー」
千菜「………先生…私…告白された…」
伊藤「おーそうか………って…え!?告白!?」
拍子抜けした声…
やっぱりビックリするよね
千菜「…同じクラスの人…なんだけど…」
伊藤「…そうか…で…どうしたんだ?」
千菜「……もちろん断った
私に近づいちゃいけないし…
それに…面白半分だったのかもしれない…
まぁ、私に関係ないから…」
伊藤「そっか…そろそろ寝な
俺も仕事するし。一時間目が終わる頃起こしてやるから」
千菜「…うん…ありがとう先生……」
私はゆっくり目を閉じ眠りについた