君が嫌いで…好きでした

奏叶「それだけ言うと千菜はどっか行っちゃって…でも俺はなんか嬉しかった
皆は冬馬を死んだって言ってるのに対して千菜はまるで冬馬がまだ生きてるみたいに言ったから…」


――――――…

「何あいつ…急に現れてなんなの?」


湊「あいつってあれじゃね?例の噂の!4組の…東 千菜!」


「あぁ!私その噂知ってる!」


奏叶「………噂?」


湊「かな知らないのかよ
あいつに関わる奴は必ず死ぬらしいぜ?」


奏叶「死ぬ?んな事あるかよたかが噂だろ?」


「それがそうじゃないんだって!
私の情報じゃあの子の家族や恋人も全員亡くなってるらしいよ!」


「えー怖いって!
さっき話しかけられたけど大丈夫かなぁ?」


家族や恋人……?
さっきの奴が…?


東…千菜……―――――



千菜「私そんな事……」


奏叶「千菜が覚えてなくても俺は覚えてるよ
俺はその時から千菜の事気になってた

そして2年になって千菜と同じクラスになったんだ

なんだか嬉しかった
1年の時はクラスが離れてて噂を少し聞くぐらいだったから

何て言うかな…
やっと近づけると思った

どんな子なんだろうってずっと千菜の事見てた
噂が本当かどうかなんて千菜を見てればすぐ分かった

周りも千菜の事を避けてたけど誰よりも周りを避けてたのは千菜だって分かった

俺にあんな風に言ったのは千菜がそれだけ辛い思いをしたんだって
そして…もう誰かが自分のせいで死んで欲しくないから1人で居るんだって」


…どうして奏叶はいつも話してもない私の気持ちを読み取るんだろう

噂のお陰で誰も私に近づかなくて…それはそれで悲しかったけど…誰かが死ぬよりはよかった


奏叶「徐々に人殺しなんて噂も流れたけど俺は信じなかった
あの時あんな風に俺に言ってくれた千菜が人殺しのわけない

それで…いつかの昼休みにさ
俺、自販機に飲み物買いに行って戻るときに裏庭でご飯食べてる千菜を見つけたんだ」



――――…葉っぱが紅葉していて少し寒くなってきた秋だった


…あ…千菜だ


いつも昼休み教室に居ないと思ったらここでご飯食べてたんだ
もしかしていつもここに1人で?


その時一匹の子猫が千菜に近づいていった



千菜「……おいで」


千菜が手を出すと子猫はスンスンと匂いを嗅いでた



千菜「お腹空いてるの?これ食べて」…―――



奏叶「自分のパンをちぎって子猫にあげてる時にさ千菜…笑ってたんだよ

初めて千菜が笑ってるのを見たし子猫に対してあんなに優しく笑うんだって知った

やっぱり千菜は優しい奴なんだって…
そこで初めて気付いたんだ
千菜の事が好きだって…

俺は千菜に救われたし助けられた
だから今度は俺が千菜を助けてあげたいって思った

あの時みたいにまた笑ってほしいって…
だから何度千菜に突き放されても諦めない
絶対に千菜を助けるまで諦めてたまるかって

だってさ、千菜の事助けられるの俺しか居ないじゃん?」


奏叶はにっと笑った

どこからそんな自信が出てくるの…


いつも怖かった
まるで暗くて長いトンネルに居るみたいだった

ずっと…ずっと出口のないトンネルをひたすら歩いてた

だけど出口を見つける事が出来なくて…
いつしか歩くことをやめてしまった
私はずっとここに居るんだって…諦めていた

だけど突然現れた光
その光の中から千菜って私の名前を呼ぶ



奏叶「千菜っ行こう!」


歩くことをやめていた私の手を引いて走り出した


ようやく抜け出たトンネルの外は…キラキラしていてとても眩しかった



―――…こんな事初めて
だからどうしていいか分からない

だけどこれだけは言える…



千菜「ありがとぅ…っ…」
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