君が嫌いで…好きでした

ずっと暗闇の中に居た私を奏叶は連れ出してくれた
奏叶だけが私を見つけてくれた…

嬉かった
奏叶が連れ出してくれた世界を奏叶と一緒に見ていきたい

もう怖がるのはやめる
もう逃げるのはやめる

もう1度信じてみよう


千菜「奏叶…私の話聞いてくれる?」


奏叶は話してくれた
私も向き合わなきゃいけない

大丈夫
きっと奏叶になら話せる

思い出さないようにしていた赤く暗い過去の記憶……


奏叶「うん…大丈夫だから千菜」


奏叶の優しい笑顔に少しだけホッとした…
奏叶には知ってほしい

私は一呼吸おいて話始めた


千菜「…私が12歳の時、家族で車に乗って出掛けてる時だった
突然前から車が突っ込んできて…私達は事故にあった

幸い…後ろに座っていた私とお兄ちゃんの楓は少し怪我もしたけど大丈夫だった
だけど前に座っていたお父さんとお母さんは…助からなかった

それから私と楓は祖父母に引き取られた

お父さんとお母さんが死んだのは辛かったけど…楓が居たし…おじいちゃん、おばあちゃんも優しくて楽しかった

だけど半年くらいしておばあちゃんが亡くなったの
元々…おばあちゃん足が悪くて、買い物に行った時に階段から足を滑らせてその時に頭をぶつけてしまったらしいの…

そして…しばらくして後を追うようにおじいちゃんも亡くなった
私達が学校から帰ってくると家の中で倒れてるおじいちゃんを見つけて急いで救急車を呼んだけど間に合わなかった

そしてとうとう私と楓だけになった…
私達は残された貯金でアパートを借りて生活し始めた
楓は学校をやめていくつもバイトを掛け持ちして働いた

私が高校に入れるようにって…私の為にいつも頑張ってくれてた
私も楓の力になりたくて…バイトは出来ないから家事を頑張った

楓は残されたたった1人の家族だったからどんなに大変でも2人で支え合って生きてた…
だけど私の14歳の誕生日に交通事故にあってそのまま……

その日私はたった1人の家族まで失ってしまった
楓の遺品の中に包装されたプレゼントがあった

メッセージカードにはhappy birthday 千菜って書いてあって…私の大好きな音楽のオルゴールが入ってた…

どうしようもない気持ちに襲われた
楓だけは居なくならないでって…思ってたのに…

私はとうとう1人ぼっちになった
…私は大切な家族を皆失ってしまった

あの時ほど…死にたいって思った事はない
どうして私だけ取り残されるのって…

お葬式の度に…遺影の中で笑っている写真を見る度に…もう…2度と会えないんだって思わされた

そんな時に私に声をかけてくれたのが幼馴染みの真琴だった
両親が死んだ時から私の事を気にかけてくれてて…
楓が死んだ時に自分の中で大きな存在だって気付いたの

ずっと側で支えてくれてた…
だから私達が付き合うのに時間はかからなかった

笑えなくなってた私に真琴は…たくさんの事をしてくれた
私に色んなものを見せてくれた

いつしか私はまた笑えるになった
真琴が居てくれたから立ち直れた
1人じゃないんだって…本当に嬉しかった


………真琴が死んだのはその半年後
私をかばって歩道に突っ込んできた車に引かれて…

血だらけで…徐々に冷たくなっていく真琴の手を握りながら…ずっと必死で名前を呼んだ…

生きていて……
もう居なくならないで
真琴だけは助けて…


そんな願いも叶わずに真琴は帰らぬ人になった…
もう何回お葬式をしたか分からない
真琴のお葬式の時には涙すら出なかった…


そして噂が流れ始めた
でも…そんな事すらどうでもよかった
もう…どうでもよかったの……」
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