君が嫌いで…好きでした

話しているうちに知らぬ間に涙が流れていた…

あの時の事を思い出すとまだ体が震える…
赤い血…救急車のサイレン…冷たくなっていく体…お葬式の線香の匂い…


全部大嫌い……



奏叶「―…辛い…なんてもんじゃないよな
苦しいのに俺に話してくれてありがとう千菜」



千菜「……私もいつしか噂が本当なんだって思い知らされた
私に関わった人が死んでいく

だから…奏叶が私に声をかけてきたのが怖かった
でも奏叶を信じてみようと思ったの

だけど今日来たらそんな怪我してるし…奏叶まで死んでしまうって…
やっぱり私に関わっちゃ駄目なんだって…」


もうあんな光景は見たくない…

震えて泣いている私を奏叶は抱き締めてくれた


奏叶「うん…怖かったよな…ごめん

だけど言ったじゃん?
俺は千菜を助けたいって…

大丈夫、俺はここに居るから
今も…これからもずっと千菜と居るよ

もう…怖がって1人で居る必要なんかない
俺にも支えさせて」



……………温かい…


望んでいいのかな…
奏叶と一緒に居る幸せを
もう1度だけ……



千菜「…うん…奏叶……ありがと…」



奏叶のおかげでもう1度取り戻せるかもしれない…
誰かと一緒に居る幸せを…




――…ブーブー…ブーブー…



奏叶「電話?湊からだ。ごめん千菜出ていい?」



私はうなずいて返した



奏叶「湊?どうし…湊「かなお前!何回電話したら出るんだよ!!」



大きな声…私にまで丸聞こえ……


奏叶は耳から少しケータイを遠ざけた



奏叶「何回だった?」



湊「5回目だよ!ったく…で!?お前今何処にいんだよ!」



奏叶「何処って…屋上だけど?」



湊「屋上!?」



ダダダダダ…バンっ!!


誰かが屋上までの階段をかけあがり、ドアを開けた音がした

そこには少し息切れをした奏叶の友達が居た



湊「…見つけた!かな!」


奏叶「湊?お前そんなに勢いよく開けたら壊れるだろ
てか、なんでここに居んの?お前授業は?」


湊「は!?んなもんサボったに決まってんだろ!
こっちは学校中かなの事探したっつの!」


奏叶「学校中?
お前どんだけ俺の事好きなんだよ」


あ、笑った…
奏叶の笑った時の横顔…私好きだな

でもあの人…すごい怒ってるみたいだけど大丈夫なのかな…
それに私の事嫌ってるみたいだし…



湊「は!?気持ち悪い事言ってんなよ!
こっちはかなの事心配して…!
………やっぱりそいつと一緒に居たんだな」


バチっと目が合うと睨まれた



湊「かな…お前そいつと付き合うのか?
そいつはかなを殺……」


奏叶「湊!!…それ以上言ったらただじゃ済まさないよ
千菜のせいじゃない
千菜はそんな事するような奴じゃない」



奏叶…………



湊「けどよ…っ」



奏叶「てか、まずお前は千菜に謝れ
簡単にあんな事言っていいわけないだろ
千菜を傷付けるのは許さない

それにお前だってそうだっただろ湊」



なに?この2人の空気…
この2人の間には私の知らない何かがある

それにこの人…
口は悪いけど…この人の言葉や行動はいつも奏叶の事を心配してた

今だってそう…
授業をサボって息を切らして奏叶の事を探して…
もしかしたら悪い人じゃないのかもしれない



湊「……――っ」



奏叶「湊、俺はお前の事嫌いになりたくない」



湊「……分かったよ。
東 千菜…さっきは酷いこと言って悪かったよ…」



謝ってくれた
やっぱり根はあんまり悪い人じゃないのかもしれない…



千菜「……気にしてない
それに…私の噂を知ってればあんな風に言うのは当然だと思うし…」



湊「…俺は昔…片親だったから苛められた事があるんだよ
その時唯一助けてくれたのがかなだったんだ

だから…かなが居なくなんのは嫌だったんだよ
俺を助けた唯一のダチだったから…」



……2人にそんな過去があったんだ
皆…ただ怖がってただけなんだね


それに何だかこの人…私と…



奏叶「なんか似てるなお前ら」

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