君が嫌いで…好きでした

伊藤「ふーん…東、そうなのか?」



私は先生の問いかけに頷いて返した



伊藤「そっか。東がそう決めたんなら俺は応援するよ」



そう言って伊藤先生は私のなんて頭を撫でてくれた
いつもと変わらない優しい笑顔で…



千菜「先生…怒ってないの…?」



伊藤「怒る?なんで?」



千菜「だって…さっき先生の事無視したから」



伊藤「そんな心配してたのか?
そんな事で怒らないよ

理由があったんだろ?
ちゃんと分かってるよ」



先生は笑って答えてくれた



千菜「…ありがとう…先生…」



奏叶「……いつまで千菜に触ってんだよ
いい加減離れろ変態教師!」



伊藤「お前な…教師に対して少し生意気
余裕ない男は嫌われるぞ」



奏叶「余計なお世話だよ」



……この2人気が合わないみたい
まるで磁石みたい…



伊藤「…ふぅ、生意気なガキは兎も角
さっきも言ったように東がそう決めたんなら俺は応援する

東と七瀬。俺からのアドバイスだ
1度決めたなら最後まで貫き通せ

俺はお前等の未来がどんなものか見届けることにするよ
東、お前には明るい未来が待ってる
怖がる必要はない
もうお前は1人じゃないんだ」



先生…
先生は学校で唯一声をかけてくれた
噂を知っていながら話しかけてくれて
どうでもいい話をしてきたり私の悩みも聞いてくれて…話し相手になってくれた

それが私にとってどんなに嬉しかったか分かる…?



千菜「…先生は私にとってかけがえのない…大切な人です
だから…私……ありがとう先生…」



伊藤「…教師として当たり前の事をしただけだよ俺は。でも…嬉しいもんだな」


奏叶「……ちょっと質問していい?
千菜と伊藤ってなんでそんな仲良いの?
俺にだって中々心開いてくれなかったのに…」


そう…関わろうとなんか思わなかった
私と関われば死んでしまうから…

だけど…それ以上に伊藤先生は…



伊藤「…お兄さんに…俺が似てたんだろ?東」



千菜「――――――……」



奏叶「伊藤が…千菜の兄貴に似てる…?」



伊藤「そうだろ東?」



千菜「どうして…」


どうして知ってるの…?
そんな事…何も言ってないはずなのに…



伊藤「そう驚くなよ
前に1度寝惚けた東が俺とお兄さんを間違えたんだ
まぁ、他にも思い当たるふしは色々あったけどな」



先生は笑って言った



千菜「…そんな事……」



先生と関わっていくうちにどこか懐かしい感覚を感じた


外見、話し方、仕草…
楓と少し似ていて……少しずつ伊藤先生に楓を重ねていたのかもしれない…



伊藤「東が俺に心を開いてくれたのはそんな理由だよ
だから本当に心を許したのは七瀬が初めてなんだよ。悔しいけどな」



先生…知ってたなら今までどんな気持ちで接してくれてたの…?



伊藤「そんな顔するな東。謝る必要もないからな?俺はむしろそれでよかったと思ってる。だからいいんだ」



変わらない…先生はずっと笑顔で私に接してくれた
奏叶もずっと笑顔だった


私は気付かないうちに…先生や奏叶に沢山救われてたんだね


伊藤「さて、大変なのはこれからだ
七瀬はしっかり東の事を支えろよ
東、俺はいつでも保健室にいるから何かあったら遠慮しないでいつでも来いよ?

さぁ、さっさと教室戻りな
学生の本業を忘れるなよ」



奏叶「分かってるよ」



千菜「…ありがとう…仕事頑張って先生…」



伊藤「東、七瀬…ありがとな」




――――…この時に気付くべきだった
先生の寂しそうな笑顔に…

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