君が嫌いで…好きでした

保健室を後にして
授業中の静かな廊下を奏叶と歩いた


これから先…何が起こるか分からない
だけど…また誰かを失うような事はしたくない

やっと出来た繋がりを守りたい
だから…頑張りたい



奏叶「ごめん千菜、先教室戻ってて」



中央階段の前で止まる奏叶

中央階段は屋上に行ける唯一の階段
もしかして…



千菜「…湊…?」



奏叶「まぁね
あんなところで寝てたら風邪ひくし
それにあいつ意外に寂しがり屋なんだよ」



お母さんみたい…
奏叶ってきっと友達の事大事にしてるんだな…



千菜「分かった…」



奏叶は笑顔でお礼を言うと階段を上がっていった


私は奏叶が見えなくなるまで見送って教室に戻った


教室に戻るともう休み時間に入っててガヤガヤと賑やかだった


私が入ると皆私を見て静かになる
そしてまた話始める


この光景は相変わらず変わらない

別に平気
いつもの事だから

それに今は…先生や奏叶の言葉があるからどこか心強い


私は席に座って読書を始める
この落ち着いた時間が好き



―――――…「ほら、授業始めるぞ」



先生の声でハッとした


あれ…もうチャイム鳴ってたんだ
読むのに夢中で気付かなかった…



先生「あれ、七瀬と野々村はどうした」


先生の一言で奏叶と湊が居ないことに初めて気付いた


戻って来てない……?
なんで…?まだ屋上なのかな



ガラッ



奏叶「セーフ!?」


先生「セーフじゃない。2人とも遅刻だな」


湊「いいじゃんセンセー見逃してよ」


先生「ダメなもんはダメだ。早く席につけ」



奏叶…湊…良かった



それにしても…こんな時間までなにしてたんだろ



キーンーコーンーカーン……


チャイムと共にようやく長い午前中の授業が終わりを告げた


数学課題出されちゃった
家帰ったらやらなきゃ…


周りは昼休みに入っててお弁当を広げたり、購買に行ったりと賑やかだった


……私もご飯食べに行こ


お弁当を出していつものように中庭に行こうとした時



奏叶「千菜、ご飯食べるの?俺も一緒に食べる」



えっ…って思った



奏叶「いいでしょ?中庭だよね、早く行こ」



別に嫌なわけではなかった
だけど問題は中庭で食べる事

私は慣れてるからまだいいけど
雪解けしてきたからってまだ中庭は肌寒い


そんな所で食べてたら奏叶が風邪引いちゃうかもしれない


千菜「だめ風邪引いちゃう…」


奏叶「じゃここで食べよ。暖かいし、ね?」


千菜「…奏叶はここで食べてなよ」



奏叶はいつもそうしてるんだし…
私もいつもと同じだから今更平気だし…



奏叶「俺は千菜と食べたいの!
じゃぁ中庭で食べるかここで食べるか千菜が選んで」



…もしかして奏叶は私がそれを選ぶように仕向けてる?


私の性格を知ってるから…
それに…私を心配してる…?


そんなの…答えなんて決まってるよ…


奏叶「どうするの千菜。俺はどっちでもいいよ?」


笑ってる…
奏叶は意外と意地悪なんだと知った



千菜「……ここで食べる…」




そう言うと奏叶はまた笑った
そして教室は一気にざわついた

なんでって…考えなくても分かる
教室で奏叶が私とご飯を食べてるんだから


私達を見てはいつものように口々に何か話していた


見られるのは慣れてるけど…
こんな風に見られると少し…恥ずかしい気がする…

奏叶は何も気にしてないみたいだけど…



奏叶「千菜…もしかしてご飯それだけ?」



千菜「そうだけど…」



今日のご飯はおにぎり1個と野菜ジュース



奏叶「いつもそれだけ?大丈夫なの?
しっかり食べなきゃダメだって」



………奏叶って彼氏っていうより…お母さんみたい


と1人で思いながら食べていた
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