君が嫌いで…好きでした

「ちょっと…なにあれ」


「なんで奏叶と東さんが一緒にご飯食べてるの?」


「てか…2人付き合ってるの…?」


「あり得ないでしょ。だって東さんだよ!?」


「でも奏叶からよく東さんに話しかけてるし…」


……………居づらい…
まさかこんなに見られるなんて思ってなかった


ガタ…



奏叶「千菜?どこ行くの?」



千菜「……お手洗い…」



そう言って私は教室を出た
それを見ていた女子が居るとは知らずに…



奏叶「……………」



湊「おい、かな。ちょっと来いよ」




―――トイレ



はぁ…なんだか息が詰まりそう
唯一ここが落ち着ける場所だなんて…


いつも1人で居たからかな…
誰かとずっと一緒に居るのが慣れない…


これから少しずつ慣れていくのかな


……これから…?
これからも奏叶が私の隣に居るなんて保証はないのに…?


…………だめだめさっき決めたんだから
もうそんな事考えない


教室戻らなきゃ
奏叶が待ってる…

私はトイレを出て教室までの長い廊下を歩いた

昼休みの賑やかな廊下
ふと足を止めて窓の外を見た


雪がまだ少し残ってる
空は青く太陽が輝いてる
今日で全部溶けちゃうかな…


冬が終わるれば次は暖かい春が来る
暖かい…春が…


「東さんちょっといい?」


振り返るとそこには数人の女子が居た


この人達見たことある
確か同じクラスの人達

今まで噂を怖がって声をかけるどころか近づくことすらしなかった人達が私に声をかけてきた

考えなくても分かる
嫌な予感しかしない

案の定嫌な予感は当たるもの
その人達に連れられて人気が少ない東階段に来た


わざわざ人気のない東階段に連れてきてこれから何が起こるのかは大体想像がつく


「東さん、なんでここに連れてこられたか分かる?」


恐らくこの人がこのグループのリーダー的存在…
…めんどくさい事になっちゃった


千菜「…そんなの知らない」


ただそれだけ返した

「とぼけないでよ分かってるでしょ?
奏叶と湊の事だよ」


…分かるわけない
貴方達が何を考えてるかなんて


「私達はずっと奏叶達の事が好きだったの
なのになんであなたと一緒に…」


なんで私にそんな事言うの
好きなら奏叶みたいにぶつかればいいのに



「まさか付き合ってる訳じゃないよね」


「なんとか言ったら?」


千菜「…貴方達に言う義理はない」



なんて…自分勝手な人達なんだろう

自分達の想いが届かないからってこんなやり方しか出来ない
本当に……



千菜「馬鹿みたい」



「な…っ」



こんな人達怖くない
私は間違ってない。ならこの際全部言う



千菜「馬鹿みたいって言ったの
散々噂を怖がってた癖に都合よく声をかけてきて…

好きな人取られたからって
そうやって集まって影でこんな風にするしか出来ないの?
馬鹿じゃないの」


「なにっ…こいつムカつく!」


「奏叶は私達の物だったんだよ!」


千菜「物…?
奏叶も湊も貴方達の物なんかじゃない

そんな風に言う貴方達には絶対に渡さない」



奏叶も湊も私の事を理解してくれて一緒に居てくれる大切な人達だから


「こいつっ!」


「やっちゃえ!」


彼女達が持ってきたのは水の入ったバケツ

かけられる…っ…



―――…バシャッ…


ポタ…ポタ…



水が落ちる音が聞こえる

でも…不思議…冷たくないの…



「…えっ…!?」


「なんで…っ…」



女子達の声がわずかに震えているのが分かった

一体…何が…
ゆっくり目を開けると私の前に水をかぶってビショビショに濡れている奏叶と湊の姿があった


どうして2人がここに?
それに…私を庇ってくれた…?


湊「…つめてぇ。しかもビショビショだよ」


「ぁ…なんで…なんで湊と奏叶が…」


奏叶「間に合って良かった
で…どうゆう事か説明してくれる?」



奏叶…いつもより声が少し低い
もしかして怒ってる…?



「ち…違うの奏叶!せ、先生に掃除頼まれて…!そしたら滑って…!東さんに…!」



湊「そんな嘘臭い言い訳どうでもいいわ
この状況で誤魔化そうとするお前らがすげーわ

最悪だなお前ら」
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