君が嫌いで…好きでした
……トントントントン…
何の音だろう…
何だか懐かしい音…
それにいい匂いがする…
――――――…
トントン…コトコト…
千菜「お母さんご飯まだぁ?」
母「もうすぐ出来るわよ~」
千菜「あれ、お兄ちゃんも手伝ってたんだ」
楓「千菜の好きな奴作ったぞ。茶碗とか用意しな」
千菜「はぁい」
バタン
父「ただいまぁ」
千菜「お父さん帰ってきた」
楓「お帰り父さん」
父「お、いい匂いがするな」
母「ふふふ、さっ、ご飯にしましょ」
――――――――…
お母さん…お父さん…お兄ちゃん…
千菜「…ん……」
……ここは…私の部屋?
どうして…学校に居たはずだけど…
あれ…どうしたんだっけ…
……そうだ私……また倒れたんだ……
でもどうして…家に居るんだろう…
奏叶「あ、千菜おはよ」
千菜「…奏叶……!?」
なんで奏叶が私の家に…
奏叶「千菜倒れたの覚えてる?
具合どう?大丈夫?」
状況が飲み込めないけど…とりあえず頷いた
奏叶「そっか、良かった」
湊「お、やっと起きたのか
ちょうど飯も出来たところだよ」
千菜「湊まで…!?どうして…え…?ご飯?」
コト………
湊「俺が作った栄養満点飯だ。しっかり食えよ」
頭が少し混乱する…
目の前に運ばれた美味しそうな匂いのする温かいご飯
なにこれ…どうなってるの…
まず湊がご飯を作れるって意外なんたけど…
奏叶「湊のご飯の味は俺が保証するよ
すっごい旨いんだこれが」
湊「これを食えばもう倒れることもねえだろ」
……もしかして…心配してくれた?
わざわざこんなご飯まで作ってくれて…
湊「今は余計なこと考えないで兎に角食えよ」
千菜「…いただきます…」
私はご飯に手を伸ばして口に入れた
パクっ…
こんな風に…ちゃんとご飯を食べるのは久しぶり
湊「どうだ旨いだろ?」
千菜「…うん…すごく美味しい…」
さっき…懐かしい夢を見たな…
お母さんのご飯もこんな風に温かくて…とても美味しかった
湊「よし、俺達も食うか!」
千菜「え…?」
机に湊と奏叶の分もご飯が運ばれてくる
奏叶「ごめんね千菜
俺達の分も勝手に作っちゃった
でも1人で食べるより皆で食べる方がきっと美味しいからさ」
奏叶………
湊「ってことでいただきまーす」
…私の家に湊と奏叶が居る
そして…3人でご飯を食べてる…
なにこれ…こんな事想像もしなかった
お父さん…お母さん…お兄ちゃん…
よくこんな風に皆でご飯食べてたよね…
湊「それにしても東
お前ん家の冷蔵庫ほとんど何も入ってねぇじゃん
こりゃ栄養失調で倒れるわけだ」
奏叶「これからは時々ご飯作りに来るよ
千菜1人じゃ心配だからね
それにしてもうま!湊また腕上げたな!」
まるであの頃に戻ったみたいに錯覚してしまう…
誰かと食べるご飯って…こんなに温かくて美味しくて…嬉しいものなんだね
ポロっ…
千菜「…2人とも…ありがと……」
こんな気持ちを思い出させてくれて…
この時…本当に誰かと居る幸せを感じた
伊藤先生が言ってたみたいに本当に違う未来が待ってるんじゃないかって思った
だけど…それから数日後
私に再び悪夢が襲うことをこの時の私は想像もしていなかった
まさか…あの人が…
死んでしまうなんて…