君が嫌いで…好きでした
ザ――――――…
千菜「…うそ……先生がそんな事…
なんで…なんですぐ教えてくれなかったの…!?」
奏叶「…それが伊藤との約束だったからだよ
伊藤が千菜に何も言わなかったのは千菜の事を大切に思ってたからだよ
千菜が…辛い想いをしないように伊藤は最後まで笑ってたんだよ」
――…『東、気を付けて帰れよ』
先生………っ……
千菜「……私の…私のせいで…っ」
奏叶「千菜
伊藤は千菜が自分を責めることを望んでないよ
それに…千菜のせいじゃない」
千菜「違う……私が…伊藤先生を殺し…」
奏叶「生かしたんだよ」
生か……した……?
奏叶「……伊藤は最後に言ってたよ
自分がここまで生きられたのは千菜が居たからだって…」
千菜「…そんな…私が……?」
奏叶「千菜は誰かを殺す力があるんじゃない
誰かを生かす力があるんだよ
俺ももしかしたら骨折だけじゃ済まなかったかもしれない
伊藤もここまで生きられなかったかもしれない
だけど俺が骨折で済んだのも伊藤がここまで生きられたのも…きっと千菜のお陰なんだよ
俺はそう信じてる」
私には誰かを生かす力がある…?
そんな風に今まで考えた事もなかった
だって………
千菜「奏叶………」
奏叶「俺も伊藤も…それにきっと千菜の家族も…誰も千菜の事責めてないよ」
どうして…
どうしてこんな風に言えるんだろう
どうして奏叶は…奏叶の言葉は…
私の心を軽くしてくれるんだろう…
千菜「…ぐす…っ…奏叶…ありがとう……」
奏叶「うん。ほら、中入ろ?
伊藤に…ちゃんとさよなら言わなきゃ
その前に着替えが先かな?
こんなになるまで濡れちゃって…
風邪ひいてもしらないよ?
まっ、そしたら俺が看病してあげるから安心して風邪ひいて」
なんて冗談を言って奏叶は笑った
奏叶は優しい…
いつもこんな風にさりげなく私の事を助けてくれる
先生…
出来るなら…ちゃんとお別れしたかった
……今まで沢山助けてくれて…私に声をかけてくれて話し相手になってくれて笑いかけてくれて私……本当に嬉しかった…
先生に出逢えて…本当に…良かった
伊藤先生…ありがとう…
そして…さようなら…先生……