君が嫌いで…好きでした

千菜…千菜………


…………誰…?
私を呼んでるのは……誰……?


お父さん…お母さん…お兄ちゃん…真琴……

皆……どこ…?



伊藤｢……ま…あずま………東、起きろ｣


千菜｢……伊藤……先生…?｣


伊藤｢もうすぐ一時間目が終わる
そろそろ起きておきな｣


千菜｢…はい……｣


もう…そんな時間なんだ…


伊藤｢少しうなされてたぞ｡大丈夫か?
また夢でも見たのか?｣



千菜｢……覚えて…ないです…｣



伊藤｢そうか…
そういえばお前が寝てる間にお前を探しに来た奴が居たぞ｣



千菜｢え……?｣



伊藤｢居ないって言っといたよ
東と同じクラスの…確か名前は…
七瀬 奏叶(ななせ かなと)だったかな?｣



雪が降り積もる白い帰り道…



｢千菜、俺と付き合って｣



千菜｢…な…なせ…かなと…｣



私に告白してきた…あの人が…私を探しに……?



千菜｢……そうですか…
ありがとうございます…教室戻ります…｣



伊藤｢東、自分一人で抱え込むなよ
何かあったらいつでも来いよ?｣



千菜｢……うん…｣



伊藤｢あ、それからこれ持ってけ」



先生がくれたのは沢山のカイロ



伊藤｢昼、どうせ中庭で食べるんだろ?
無いよりましだろ?持ってけ」



伊藤先生は優しい…まるでお兄ちゃんみたい…



千菜｢…ありがとう先生…仕事頑張って…｣



休み時間の賑やかな廊下を歩いて教室に向かう


ふと窓の外を見ると白んだ空からまた雪が降っていた


…教室に入るとすぐ席に座ってまた読書



｢あ、お帰りー♪千菜どこいってたんだよ｣



皆の唖然とした視線がまた集まった


さっき先生に教えて貰った名前


七瀬奏叶



いい加減しつこい
それにこの人色々と馴れ馴れしい



会った時から呼び捨てだし…



奏叶｢なぁ千菜｣



千菜｢うるさい…貴方には関係ないでしょ｣



出来るだけ冷たく突き放すように言った
関わりたくなかったから



｢おら席に着けー授業始めるぞー｣



タイミングよく先生が入ってきて七瀬奏叶はしぶしぶ席に戻って行った



それから四時間目まで授業を受けながら
窓の外でしんしんと降っている雪をただじっと眺めていた

休み時間はずっと読書をして過ごした


休み時間のたび七瀬奏叶が私に話しかけようとしていたけど他の人達に止められて来ることはなかった


私にとってそれは都合が良かったけど…


四時間目が終わると私は静かに教室を出た


白い雪の上をシャクシャクと音を立てながら歩く



千菜｢…はぁー………すごい雪……｣


やっぱり少し寒い…
でも先生のカイロのお陰で少し温かい…


学校の中庭に1ヶ所だけ屋根のある場所がある


私がいつもお昼を過ごす場所


ベンチに座りお弁当を出して私は食べ始めた