君が嫌いで…好きでした
千菜「……………」
食べさせられるなんてそんな子どもみたいな恥ずかしい事絶対しない
奏叶も絶対分かってやってる
やっぱり少し意地悪…
奏叶「分かった、ごめん千菜
しないからそんなに怒らないで
ほら、温かいうちに食べなよ」
私は奏叶からお粥を受け取った
……今日…初めてのご飯を一口、口に入れた
奏叶「どう?うまい?」
千菜「…うん…すごく美味しい…」
奏叶「そっか!良かった♪」
安心したように…そして嬉しそうに笑った
なんだろ…私の周りって…
奏叶「どうした千菜?」
千菜「…奏叶も湊も伊藤先生も…皆料理上手だからすごいなって…」
奏叶「え、ちょっと待って…伊藤!?なんで伊藤!?」
千菜「休日は…たまにご飯作りに来てくれてたから…外に食べに行った事も…」
奏叶「へぇ…そうなんだ
(…あの野郎…それじゃまるでカップルじゃんか…)」
きゅぅ…きゅぅ…
奏叶「なに?この鳴き声」
千菜「…チョコ…?」
チョコが鳴いてる…なんで…
…そういえば今日…まだ餌あげてない…?
千菜「ごめんチョコ…っ
待ってて、今餌あげるからね」
くら…
立ち上がろうとしたらひどい立ち眩みに襲われた
熱のせいで…でもチョコが待ってる
奏叶「無理しないで千菜は寝てて
俺が代わりにやるからさ」
奏叶……
千菜「…ありがとう
そのゲージの横のやつ…中のお皿に入れてあげて…」
奏叶「これね。分かった」
きぃ…とゲージを開ける奏叶
はぁ…熱のせいとはいえ
チョコに餌をやり忘れるなんて飼い主失格かも…
チョコごめんね…
きゅぅきゅぅ…
奏叶「あっやばい」
チョコは餌に目もくれずゲージの外に飛び出してきた
ひょこっ
奏叶「あ、やばい。ゲージから出ちゃった!」
千菜「えっ…ごめん捕まえて」
だけど奏叶は表情を曇らせた
捕まえようと手を伸ばすけど中々掴まない
千菜「……もしかしてハムスター苦手なの?」
奏叶「苦手ってか…怖いんだよね
こいつらいつ噛みついて来るか分からないじゃん!?」
まさか奏叶がハムスター苦手なんて…
そうしてるうちにチョコは棚から私のベットの上までポスッと落ちてきた
千菜「チョコ…?」
ひょこひょこと私の方に歩いてくる…?
そして私のところまで来るときゅぅきゅぅと鳴いた
千菜「…もしかして…心配してくれたの?チョコ
お腹空かせて大好きな餌が目の前にあったのに私の所に来てくれたの?
チョコは優しいね…
……で、奏叶はそんなに目を輝かせてどうしたの」
奏叶「いや…俺まじ泣きそう…
やばい…感動した
ちっこい体で危険をかえりみず千菜を心配して…っチョコ…お前って奴は…」
奏叶…変なスイッチ入っちゃった…
意外と涙脆いんだ…
きゅぅきゅぅ
千菜「チョコありがとう。私は大丈夫だよ
奏叶、ごめん。餌取って貰ってもいい?」
奏叶「おう」
私は餌を自分の手の上に乗せてチョコに食べさせた
もぐもぐもぐ…
奏叶「おぉー!食ってる食ってる!
こうして見てると可愛いな~」
千菜「…チョコは去年の春から飼ってるの
ずっと売れ残ってたこの子を…
1人ぼっちだったこの子をほっとけなくて
チョコは今…私にとってかけがえのない大切なたった1人の家族なの」
ずっと一緒に居た
寂しい時も…嬉しい時も
ずっと一緒に過ごしてきた大切な家族
奏叶「ふーん…なんかいいねそうゆうの
千菜、俺もチョコに触ってみていい?」
千菜「…触れないんじゃないの?」
奏叶「千菜の家族なんでしょ?
だったら俺も仲良くなりたい」
そう言って奏叶はゆっくりチョコに手を近づけた