君が嫌いで…好きでした
メール画面を出して東にケータイを手渡した
それを見た東はきょとんとしたように俺を見た
湊「かなの願いなら断るなんかあり得ねぇけど…よく考えたら今までかなが居たのに急にお前と2人きりとか…」
じっと俺を見ている東の純粋な目に何故かだんだん恥ずかしくなってきた
湊「どうしていいか分かんねぇ…
いきなりお前と2人きりとか何話せばいいかも分かんねぇし。てかその前に俺はお前に酷いこといっぱい言ったし…」
普通なら嫌われるような酷い言葉をこいつに沢山言った
俺にどんな理由があってもこいつを泣かせたことに変わりはない
普通ならこいつも…
千菜「…今更気にしてないよ…だから湊も気にしない…で…」
東の言葉は俺にとって予想外だった
散々酷いこと言った。こいつなんか居なければいいと思ったこともあった
こんな俺をそんな言葉1つで許すってのか
湊「…お前ってお人好しだな。そんなんじゃ騙されんぞ」
千菜「ぇ…?」
ほんとに今まで見てきた女の誰とも違う
こいつといると調子が狂いそうだ
湊「まぁいいや。てか1つ聞いていい?
前から気になってたんだけどさお前のあの噂って本当なんだ?
半分誰かが嫌がらせに流したデマかとも思ってたけどお前実際1人暮らしだし」
適当に話題を変えようと思って出た言葉がこれ。俺としては気になってた事をさらっと聞いただけだったけど…
千菜「……本当だよ。家族も…当時付き合っていた人も皆…」
東はうつむき身体は微かに震えている
必死に何かを思い出さないようにしているように見えて…俺は東をあの時の自分と重ねてしまった
そしてしまったと思った
無神経な事を言って東を苦しめてしまったと思った
そしてすぐに謝った
湊「悪い!嫌なこと思い出させちまった!?
ごめん!俺が悪かったから、もう聞かねぇから…だから泣くなよ!」
うつむいて震えている東を見て泣かせてしまったと思った
女が泣いてる…ましてやこいつが泣いている所なんて…どうしていいか一気に頭がパニックになった
湊「あ、そうだこれやる!
俺がこの前ガチャポンで取った幻とも言われるマスコット"ヒデトラ君"!!」
今思えばなんでこんなもん出しちまったのか分からない
でも東を慰めようと必死だった
千菜「…変なの…てか要らない」
湊「は!?お前ヒデトラ君の良さ分かんねぇのかよ!
幻って言われるくらいすっげぇレアなんだからな!」
なのに東ときたら俺のお気に入りのヒデトラ君を変とか言って侮辱するし…東はヒデトラ君の良さを知らねぇんだよ
何故か俺がヒデトラ君の良さを語ってい ると東はいつの間にか笑っていた
千菜「…ふ、あははっ。なんでそんな変なの好きなの…ふふっ」
それは今まで泣いたり表情の変わらなかった東の初めて見た笑顔だった