君が嫌いで…好きでした

教室で千菜を待ってるとしばらくして千菜が戻ってきた

湊は一緒じゃなかったのを見てどこかホッとしている自分が居た

湊と千菜を思ってやっていることなのにこんなに気になって不安になるなんてなんて自分勝手なんだろな俺は…



千菜「奏叶…」


奏叶「どこか行ってたの?戻ってきたら居ないからビックリした」


千菜「…ごめん」


千菜はそれ以上何も言わなかった



そして放課後になった



湊は授業が終るなり鞄を持って出ていった
こんな風に喧嘩をするのも珍しいのにあんなに怒らせて…自業自得だよな



奏叶「千菜帰ろう」


千菜「…ごめん。今日は用事あるから先帰って…」


千菜がそんな事を言うなんて珍しい…
用事って何だろう…

千菜に聞きたかったけど聞いちゃいけない気がした



奏叶「そっか。分かった。気を付けてね」



そう言うと千菜は教室を出ていった…




―――――奏叶…何だか寂しそうな顔してた…
湊も終るなり帰っちゃって今日も奏叶と一言も話してなかった…


私が奏叶と別れてやって来たのは中庭

ここで1人でお弁当を食べてる時、寒いのにわざわざ奏叶は私に会いに来て話しかけてくれた
私の好きなココアをくれたりコートをかけてくれたり…

玄関で雪うさぎを一緒に作ったりもした
いつも1匹だけの雪うさぎの隣にいびつな雪うさぎが並んでいた
あの時の奏叶の言葉は自分の中に響いた


校舎の裏で女子に絡まれてる時に2人が庇ってくれた
寒いのにびしょ濡れになって体を張ってくれた…


保健室で私が倒れた時は家まで送ってくれてご飯まで作ってくれた


屋上では初めて奏叶と心が通じ合えて湊とも友達になる事が出来た


人を避けて1人ぼっちだった私に辛いことも楽しいことも教えてくれた大切な2人だから…だからこのままでいいわけない
私はあの2人の事が大切だから…私に出来ることを…今度は私が2人を助けたい



校内の思いで巡りを終えるともう日が沈み初め夕焼けの綺麗なオレンジ色の空になっていた


教室に戻ってドアを開けるとそこには先に帰ったはずの奏叶の姿があった


奏叶「千菜!良かった…遅いから心配しちゃった」


千菜「奏叶…?先に帰ったはずじゃ…」



奏叶「うん…そう思ったんだけどやっぱり千菜が心配でさ」



夕焼けに染まる君の笑顔
こんな私をずっと思い続けてくれた君が最初はうっとおしくて大嫌いだったけど今はいとおしく思えるほど好きになった


私はゆっくり奏叶に近寄って抱き付いた



奏叶「千菜…!?どうしたの?」


少し動揺してるような奏叶の声
でもそっと抱き締めてくれた

とても暖かくて嬉しかった



千菜「…奏叶」



奏叶「なに?」



千菜「別れよう…」



例え君を傷つけても……私は……



奏叶は驚いた顔で私を見た



奏叶「…千菜…それ本気…?」



千菜「冗談でそんな事言わない」



奏叶「そ…か。分かった。千菜がそう決めたなら俺はそれを受け入れるよ」


今までしつこく付きまとってたのが嘘みたいに奏叶はあっさり受け入れた


千菜「…さようなら」


私は鞄を持って教室に奏叶を残して先に教室から出ていった



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