君が嫌いで…好きでした
鈴村先生が何かを言いかけた時、奏叶は察したように慌てて私の耳をふさいだ
だから私には鈴村先生が何を言ったのかは聞こえなかった
奏叶「千菜聞こえた!?」
千菜「ううん…聞こえなかったけど…」
私がそう伝えると奏叶は安心したように一息ついた
凄い焦ってたみたいだけど…鈴村先生なんて言ったんだろう
鈴村「あらあら慌てちゃって…そんなに千菜ちゃんに聞かれちゃまずかったのかしら?」
鈴村先生は意地悪そうに笑っていた
奏叶「当たり前でしょ!千菜の前でぺらぺら喋らないで下さいよ!」
鈴村「まぁ、千菜ちゃんは聞いてなかったんだから良かったんじゃない?」
奏叶「そういう問題じゃ…」
湊「俺は聞いてたけどな」
奏叶「湊!?」
湊「まさか奏叶がそんなの持ってるとは思わなかったけど」
奏叶「おまっ…絶対言うなよ!」
湊は聞いてたんだ…なんか気になるな…
湊「どうしようかな~♪」
奏叶「てめぇ…楽しんでるだろ」
湊「まぁな~♪」
鈴村先生と湊にからかわれて奏叶も大変だな…
千菜「奏叶、私は何も聞かないよ。それにもし聞いても奏叶の事好きだから…大丈夫…」
奏叶「千菜…!」
湊「だってよ。愛されてんなぁ」
鈴村「千菜ちゃんまるで女神様だね」
奏叶「2人とは大違いですよ!」
鈴村「ふふ、奏叶くんが面白いからつい意地悪したくなるのよね。あ、そろそろ帰りなさい。私もこれから会議があるのよ」
湊「そうだな。奏叶も来たことだし」
奏叶「会議頑張ってくださいね~」
千菜「先生…また明日…」
鈴村「うん。気を付けて帰るのよ」
保健室の窓辺から射し込む淡いオレンジ色の夕陽の輝きに照らされた先生の笑顔がとても素敵に見えた
帰り道―――…
湊「でも鈴村先生が結婚なんて驚いたな」
奏叶「しつこいくらい指輪見せてきたね…まぁそれだけ嬉しい事なんだよな」
千菜「先生幸せになってほしいな」
奏叶「そうだね」
湊「もうすでに幸せいっぱいだよな」
鈴村先生と凜ちゃんが笑って居られる幸せな未来が待っていますように
千菜「ここで大丈夫。送ってくれてありがとう」
湊「また月曜な」
奏叶「またね千菜」
送ってくれた2人を見えなくなるまで見送ると何となく空を見上げた
夕陽のほとんどが沈みかけ薄い紺色の空と淡いオレンジ色の夕陽の色が混ざっているような不思議な空だった
その空を見て何となく悲しいと思った
千菜「吸い込まれそう…」
しばらく空を眺めてから私は家に入った
千菜「ただいまチョコ。さっきね夕焼けの空が凄く綺麗だったよ。それにね鈴村先生と凜ちゃんが結婚するんだって」
チョコに話しかけながらゲージから出してテーブルの上に上げてあげると鼻をすんすんと動かしながらぽてぽて歩いていた
千菜「凄いよね…こうゆうのを運命って言うのかな…。」
何人も居るなかでたった1人と結ばれる…
私と奏叶の出逢いも運命って…言えるのかな…
……なんか自分の事を考えるのは恥ずかしい…ご飯にしよう
私はキッチンで軽くご飯を作り、いつものようにチョコと一緒に食べた
奏叶がくれたオルゴールを流しながら…
知らない曲だったけど聴いているうちに好きになった
聴いてると奏叶が側に居てくれるような気がして…
最近は…良いことばかり…
毎日が楽しみで仕方ない
ずっと続いていけばいいな…
でも現実はそう簡単にはいかなかった
この後、思ってもない出来事が起こってしまう